N-⑯ 固肥り(小便肥り)
「(中略)之は女学生に最も多い症状で、頗る肥満し、俗に固肥りといふ訳で一見非常に健康そうに見えるが、健康でない證拠は常に疲労し易く、動悸、息切(イキギレ)、身体重量感等種々の支障が起り易いのである。此原因としては、萎縮腎に因る余剰尿が全身的に少量づつ溜積しそれが長時日に渉り固結するので、勿論本人は気付かないのである。故に少量の食餌を摂るに拘はらず肥満する人があるが、それは右の如き人である。」
(「浮腫及び盗汗」天 S22.2.5.)
「肥った人間をみると如何にも健康そうに見えるが、実は逆の場合が頗る多いのは事実である。その訳をかいてみよう。
程のよい肥り方なら健康に違ひないが、そういふのは滅多にない。大抵は病的である。よく固肥りといふが実は之が怪しいので、之を私は小便肥りといってゐる。
何故なれば、腎臓の悪いのが原因であるからで、今それを悉しく説明してみるが、原因は斯うである。一例を挙げれば女学生には肥ったものが非常に多い事は誰も知ってゐる通りで、之は何が為かといふと、学校で授業中尿意を催す場合、勉強の時間が惜しいのと若い女性の常としてつい我慢する。それが為、尿は腎臓外部に滲出し、固結する。その固結が腎臓を圧迫するから腎臓はいよいよ萎縮し、尿量は極減される。それが為外部への滲出量を増す事になるから、余剰尿は漸次身体全部に氾濫し固結する。それが真の原因である。
従而、尿の滞溜固結であるから何時かは浄化が起る。勿論発熱、咳嗽、喀痰は附物で、肋膜炎、腹膜炎等が病発すると共に、浮腫、盗汗も著しいのである。世間よくアンな丈夫そうなお嬢さんが大病になったり、時によると不幸になったりするのは不思議だとよく謂はれるが、右の原因が判れば成程と思ふであらう。之に就て一例をかいてみよう。
以前、神奈川県下全部の女学生の健康診断を行った際、模範健康者といはれた者が三人あった。その中の一人を私が診た事がある。固肥りの実に健康そうなお嬢さんであったが、其後暫くして発病するや急速に悪化し、結局死亡したのであったが、私は其時招聘(ショウヘイ)されたが、何しろ遠方なので行く訳にゆかなかったので断ったが、遂に右のような運命になったので、実に気の毒と思った。(中略)
以前私は力士の身体を診た事があった。名のある力士としては太刀山、大錦、年寄立浪等であったが、何れも真の健康体ではない。前記の如き余剰尿による固肥りであった。それは何よりも力士は早死である事が證拠立ててゐる。力士で六十才を越す者は滅多にないといはれてゐるにみて明かである。又肥満してゐる人に肉体を動かすと苦しがるのは無論心臓が圧迫される為でもあるが、健康者の肉は軟かいから心臓圧迫はないが、余剰尿の固結は硬いので、それで心臓を強圧するのである。然し息切れは肺臓が圧迫される為もある。
右の如くである以上、尿意を催した時、我慢する事を止めるべきで、尿意を我慢するなどといふ些細の原因から生命を失ふ結果となる事を考えたら、実に恐ろしい話で大いに注意すべきである。」
(「馬鹿肥りは病的だ」自叢五 S24.8.30)
「世間よく脂肪肥りという言葉があるが、之は間違いである。何よりも若し脂肪で肥るものならば、肉食者は肥り、菜食者は肥らない訳だが、事実は其反対の事の方が多いのである。では肥る原因は何かというと真の健康で肥る人は寔に少なく、殆んど腎臓萎縮と薬毒の為であって、そういう人に限って身体が重く、充分働けないものである。そうして漢方薬中毒の人に肥っちょが多いもので、よく青ん膨れというのがそれである。
又前者は萎縮腎で、尿の処理が悪いから浮腫が出る為であり、近来女学生などに肥っちょの多いのも、授業中などの場合男子と異って、便所へ行くのを億劫がるから、尿が腎臓の周囲に溢れて固まり腎臓を圧迫するので、其又余剰尿が身体中へ廻って、段々肥って来るので、之を吾々は小便太りと云っている。何よりもそういう人は丈夫そうに見えても案外弱く、病気に罹り易いものである。後者は薬毒が少しづつ溶けては全身的に溜るので、此肥り方は局部的、変則的が多いからよく分るのである。」
(「脂肪肥り」 S27.6.11)
《浄霊》
腎臓及び腎臓下部、鼠径部、下腹部及び膀胱、肩、