2-②、尿毒に就いて
「(中略) 不純血液、つまり「先天性黴毒」も原因に数へられてゐますが、之は、吾々の方でいふ-『水膿』の事である-と思ふのであります。
独逸の何とかいふ学者は-「あらゆる病原は尿酸だ」といっております。つまり「尿毒が身体中へ廻ってゆく。その為に病が起る』といふのですが、之は、一部的には確かにそうであるが、全部の病気がそうだとは思へませんが、実際からいって「尿毒」が原因になる場合は、非常に多いのであります。
之は、どういふ訳かといふと-腎臓の周囲に水膿が溜結する、それが腎臓を圧迫するから、腎臓が尿全部を処分し切れず、其ため『一種の余剰毒素』が血管を通じて身体中へ廻り『各種の病原』となるのであります。(中略)」 (「病原の解釈」療講 S11.7)
「(中略)次に、萎縮腎は、水膿溜結が腎臓を圧迫するので、腎臓は充分の活動が出来ないので、其の為尿が溢れる、其尿が毒素となり、又は浮腫になるのであります。此の診査は、腎臓部及び附近を指圧すれば必ず痛む個所があります。そうして此溢出した尿中の毒素を医学では尿酸と謂ひますが、私は之を尿毒と謂っております。
独逸の或学者は、「万病は尿酸が原因である」とも謂ってゐます。今も此説は相当認められてをるやうであります。
リョウマチスで、赤く腫れないのは此尿毒が原因であります。私は之を腎臓性リョウマチスと言ってをりますが、非常に治り易く、此尿素は割合に弱性で、溶解し易いものであります。
尿毒といふものは、凡有る病気になります。よく腎臓が悪くて肩が凝る人がありますが、之は矢張り、尿毒が肩へ集る人であります。足が重倦く痛む人など、皆此尿毒が下の方へ垂溜する為であります。
最も多いのは、尿毒が腹膜へ溜るので、そして其所で凝る。之は、腹部を圧すと必ず痛む所がそれであります。此尿毒は、肋膜、喘息の原因となる事もあります。ですから腎臓の為に喘息を起し、喘息の為に心臓が起るんですから、間接には、腎臓が心臓病の原因になる訳であります。(中略)」 (「腎臓疾患」療講 S11.7)
「(中略)次に、腎臓の尿毒に因る、擬似脚気ともいふべき症状があります。之は寧ろ真の脚気よりも多い位で、吾々の所へ脚気と言って来る患者が、実は脚気ではなく之が多いのであります。
此症状は殆んど麻痺はなく、脚部全体が重くて、歩行は稍々困難で、多少の痛み又は浮腫があるのであります。(中略)」
(「脚気」療講 S11.7)
「独逸の医界の泰斗○○氏の説によれば、「万病は尿酸が原因である」といふ。此尿酸といふのはここにいふ"尿毒"の事であらふ。陰性天然痘毒素が神経集注個所へ溜結し易いといふ事は、度々述べた通りであるが、人間の作業上腰部に力を入れる関係上、腎臓部に溜結するのである。之はゴルフ愛好者に特に多いのにみても瞭かである。此溜結が腎臓を圧迫する為に、腎臓が萎縮するのである。
従而、その萎縮の程度によって、例へば完全腎臓は十の尿を処置し得らるるのが、萎縮腎臓は、その萎縮の程度、例へば、九の尿を処置するとすれば、一の尿は体内に滞溜するといふ訳で、その余剰尿"一"が即ち尿毒である。此尿毒も二元毒素と同じく、神経集注個所へ溜結するが、此毒素は特に位置の関係上、腎臓部、腹部、股間淋巴腺、腹膜、肩部(肩の凝り)、頸部等へ集溜し勝ちである。
但し、左右何れか萎縮する方が、尿毒の滞溜が多いのである。但だ此尿毒は、天然痘毒素には限りあり、薬毒も使用するだけのものなるが、尿毒に於ては、二六時中間断なく製出するものなる故、此点特に始末が悪いのである。此尿毒と併せて、大体三毒が凡ての病原となるのである。」 (「尿毒」医試 S14)
「(中略)余剰尿は腎部から背中を伝つて背部に溜り諸病の原因となる。よく背部張りきつて筋肉隆々とみゆる人があるが、これが実は尿毒である。小便を我慢するのは右の如く不可であるが、頻繁に尿をするのも本当ではない。之は腹膜のため膀胱が圧迫され萎縮している為である。(中略)」 (「地天6号」講話 S24.7.20)
「(中略)面白い事には此両毒結を判別する事が出来る。即ち患部を押せば薬毒の方は固くて痛み、頑固性であるが、尿毒の方は稍々柔軟で殆んど痛みがない。(中略)」
(「腎臓病と其他の病」文創 S27)