「天然痘毒素、薬毒、尿毒の三毒は、病原であるといふ事は、大体説いたつもりであるが、是等の毒素の性質作用等に就て述べてみよふ。然毒は、遺伝性であるから古いのである。此三毒共、其浄化作用の場合、古い程痛苦が軽く、新しい程其反対である。従而、然毒に因る痛苦は比較的緩和であって、尿毒による痛苦は然毒よりも大体強いのである。然し、薬毒に於ては、其痛苦が前二者に比して断然強いのである。然し、薬毒に於ては、漢薬と洋薬とは異なるのである。
例へば、漢薬は鈍痛苦であって範囲は洪(ヒロ)く、洋薬は激痛苦であって局部的である。然し孰れも、服薬に因る痛苦は、或程度に止まるものであるが、注射に因る痛苦に至っては、其激烈なる言語に絶するものすらあり、是等は、当事者の恒に見聞する所と思ふのである。
そうして、此痛苦とは如何なる原理かといふに、浄化作用とそれの停止作用との衝突の表はれであるから、最も激しい痛苦といふ事は、最も浄化作用の旺盛なる身体へ、最も強力なる毒素によって停止せんとする大衝突であるといふ訳である。此理に由って痛苦の激しいのが、老人でなく青壮年に多いのである。故に、此理がはっきり呑込む事が出来れば、病気で死ぬといふ訳も判るのである。即ち、浄化作用停止による苦痛の為の衰弱が主なる死の原因であるといふ事である。」 (「三毒」医試 S14)
「(中略)天然痘と尿毒は二つとも高熱は出ぬ。薬毒は高熱が出る。たゞあまり沢山毒があると熱が出ない。浄化をおこし切れぬ。熱、痛み、痒み等は薬毒と思っていい。レントゲンは火傷と同じくヒリヒリする痛み、針で突刺すやうな痛みは薬毒。毒と浄化の衝突で衰弱し倒れる。弱ってる所へ急激な浄化が起ると死ぬ、肺炎の如し。(中略)」 (「特別講習講話」 S15.11.9)
「(中略)薬毒の種類によって、痛みや症状が異ふのである。
そうして私の経験によれば、漢方薬は広範囲である事と鈍痛が特色であり、洋薬は多く鋭痛で、稲妻型、針刺型、錐揉(キリモミ)型等が多く、又局部的であるのが、特異性とでもいふべきである。
特に、注射の薬毒は激痛の原因となることが往々あるのである。
次に、薬毒以外尿毒の痛みもあるが、之は多く軽痛である。又、然毒は殆んど痛みがないので、医学は先天性黴毒と思ひ誤ったのであらう。(中略)」 (「痛苦」明医二 S18.10.5)
「凡ゆる病原は然毒、尿毒、薬毒の三毒に因るといふ事は既に説いた通りであるが、之等を一層詳しく述べてみよう。先づ然毒とは何ぞや、之は薬毒の遺伝ともいふべきものであって、薬毒が何代かの人体を経て畢に変化し一種の毒素となったものである。(中略)
次に尿毒とは、腎臓の機能的活動の鈍化に因る余剰尿を言ふのである。それは如何なる訳かといふと、元来医学に於ても唱へる如く腎臓機能は尿の処置とホルモンの生産である。即ち飲食物中の不必要分が糞尿となって排泄せられる場合、曩に述べた如く異物は全部が排泄不能であるから、それが腎臓内部より外部へ滲透し、其附近に累積固結する。その固結が腎臓を圧迫する結果萎縮腎となり余剰尿を生じ漸次脊柱の両側より肩部へかけて溜積固結する。それが脊や肩の凝りである。次いで延髄部、淋巴腺、耳下腺、扁桃腺部等に移行する。
故に歯槽膿漏は、之等尿毒が歯齦より排泄せられんとする為の病気であるから、此病気は尿が腐敗して口中から排泄さるる訳である。此原因を知るに於て、その不潔なるに顰蹙(ヒンシュク)するであらう。斯の如く尿毒は万病の原因になるといっても可いのである。
次に薬毒は曩に説いたから略すが、唯だ薬毒の表はれ方に就て述べる必要があらう。それは薬毒による苦痛は発熱、痛苦、掻痒苦、下痢、嘔吐、麻痺、不快感等が重なるものである。発熱は実験上薬毒多量者程甚しいのであるから、生来無薬用者は殆んど発熱は無いといっても差支へない位である。又薬毒痛は洋薬は鋭痛が多く、針刺型、錐揉型(キリモミガタ)、稲妻型等で、漢薬は殆んど鈍痛である。掻痒苦は洋薬に多く特にカルシュウム注射は必ず蕁麻疹の原因となるから注意すべきである。
以上説いた如き三毒の区別を知る方法がある。それは固結部を指頭で圧診する場合、然毒は無痛、尿毒は軽痛、薬毒は強痛であるから、熟練によって見分ける事はさまで困難ではないのである。」
(「三毒」天 S22.2.5)
「(中略)病気の原因が固結毒素の浄化作用であるとすれば、その毒素は一体何であるかというと、之が殆んど薬毒であるから驚くのである。即ち先天性毒素とは、祖先や両親からの薬毒遺伝であり、後天性毒素とは生れてから入れた薬剤である。此事実によって先天性毒素に後天性毒素が加はるにつれて漸次毒素の量は増し、多量の毒素保有者となる結果、一時に大浄化が起る。之が肺炎、脳炎や一切の腫物初め、凡ゆる重難病の原因となる。」
(「真の健康と擬健康」自叢十S25.4.20.)